NYの住宅事情:レント コントロールと経済政策におけるマーフィーの法則(?)
中川浩宣(教員)
米コロンビア大学
在外研究中
ところ変わればということでしょうか。ここNYでは日本では考えられないような出来事は枚挙にいとまがないほど多いわけですが、今回はオーソドックスな話題に限定し、NYマンハッタンの住宅事情とレント コントロール(家賃規制、賃料規制と訳されるでしょうか)についてお伝えします。
NYマンハッタンでは多くの賃貸住宅にレント コントロールが適用されており、その規制が故に、既存の(普通にhabitableな)賃貸住宅の空きは滅法少なく、他方、規制適用外の物件は、その賃料の高騰甚だしく(住宅バブルが拍車を掛けてます)、今回の私のケースのようにアパートを求める需要サイドからしますと、賃貸アパートを探すのは容易でないことは想像に難くないでしょう。レント コントロールは価格統制であり、自由取引における市場価格を下回る水準にレントが人為的に抑えられていることから、供給サイドのアパートの貸し手もメンテナンスを行うインセンティブを失い、結果的に既存住宅の劣化が進むことが考えられます。更に、新規の賃貸住宅はと言うと、規制対象になる可能性が恐れられ、こちらの住宅投資も促されず。(増殖するのは商業ビルばかり。)したがって、ネットでみれば賃貸住宅供給は長期的には縮小傾向にでさえあるのです。
私の場合も御多分に洩れず、NY入りしてからアパート探しには随分と苦労しました。一時は途方にくれてたこともあったと言ったら大袈裟でしょうか。最終的には、不動産屋さんの知り合いが部屋を貸して下さることになり、大学付近に住処を確保することができました、幸いにも。考えてみますと、資産の取引において通常はマーケット メカニズムによるマーケット クリアリングの適用を最も重視する国で、今回は実質的にノン マーケットでようやく取引が成立したのは何とも皮肉なことです。
さて、上で述べたようなレント コントロールの弊害については、経済学者の間でも最もコンセンサスが得られているところであります。にもかかわらず、そうした規制が撤廃されないのは由々しき事態です。ポール クルーグマンいわく、これはアラン ブラインダーのいう ”Murphy’s Law of Economic Policy” (経済政策におけるマーフィーの法則)に当てはまる、そうです。つまり、我々の理解度が高く、ほぼunanimousな同意が得られている政策インプリケーションに限って、現実には生かされていないという意味で。
レントコントロールも含め、様々な問題を抱えるNYですが、この街が「人種のるつぼ」である故に人々は自由を実感できますし、宗教の問題こそあれ、クリスマス(あるいは一般的にholiday season)も皆に平等に訪れます。ロックフェラーセンターのツリーも煌びやかです。それを見る度に、青山キャンパスのツリーと点火祭が懐かしく思い起こされます。ロックフェラーセンターの今回のツリーは隣の州にあったノルウェー トウヒだそうですが、毎年どこかで巨木が切られていると思うと見るに忍びない気もします。ですから、そのような残酷さとは無縁の青山キャンパスのクリスマスツリーと点火祭に軍配。
Category: from U.S.A Posted by at 2005年12月24日 13:11
|